院内感染委員会では、松下ひふ科の松下泰三先生をお呼びして、講演をいただきまいした。
とても参考になる講演でしたので、許可をいただいて、議事録をそのまま掲載しています。


第4回院内感染防止委員会(議事録)
平成12年8月24日(木)
PM15:00〜15:40

議題 皮膚科の領域の院内感染対策について
講師:松下ひふ科 松下泰三先生







広田先生より松下先生の略歴紹介
島原高校卒
東京慈恵医科大学卒
長崎大学医学部皮膚科入局
昨年 開業









○院内で蔓延しやすい病気
疥癬
精神病院で多く見られる。ここで最後に見られたのはいつ頃でした?
Ns:三年前くらいです。
これは、非常にひそかに蔓延している。島原でも多くの施設でみられます。ここは優秀ですね。
疥癬の症状が現れやすい場所は指間・腋窩等の皮膚のやわらかいところです。
ものすごくかゆがり、男性では陰嚢にこりこりしたしこりがあったら間違いないですね。
入院や外来で入ってきた時点での入念なチェックが大切。
顕微鏡上で疥癬の虫体、卵などを見つけなければなりません。手に水泡・ぶつぶつがあったら気をつけてください。
この写真は、手のひらが白く皮膚が角化しています。ノルウエー疥癬と呼ばれるもので、はがれおちた皮膚の小片に、何百と疥癬虫がおります。こんな人がいたら、施設全体に広がります。

しらみ
毛しらみ等は、よく幼稚園で蔓延します。治療法はスミスリンパウダーの使用、卵を一個一個とっていく方法となります。

いぼ
時々みられる。職員を介してうつる可能性がある。

水虫(本題)
水虫はカビです。白癬菌によるものです。
カビのことを学術用語では真菌という。皮膚にカビがついて起こる病気を真菌症という。
全身にできるが普通は足にある。手や趾間に水虫を見つけたら必ず足を見ること。
春から九月ころまでよく出る。指の間がじゅくじゅくして皮がむけるのが趾間型。水泡ができるのが小水疱型。角質が白く厚くなってしまうのが、角化型。
顔・頭部の白癬もある。これは間違ってステロイドを塗ることによって悪化します。
爪白癬。つめがぶ厚くなったり、つめがはがれおちたりする。
これも水虫と思っていない人がおおい。
治療法は症状に合わせて完璧に治ったあとも1〜2ヶ月根気よく続けて治療しなければならない。
ちょこちょこやってすぐに薬を止めてしまうのでは治りきらない。
自分の認識で診断してしまう。必ずしも水虫とは限らないので、かならず検査をして判断する。
水虫はきちんと治すべき。自衛隊の人は水虫が多いし治りにくい。長時間、靴を履いて行軍するから、水虫から細菌感染を起こして、ソケイ部のリンパ腺がグリグリ腫れ上がっていることがよくあります。糖尿病の患者さんが水虫を持っていると、水虫による傷から細菌感染を起こして足が腫れてしまうことだってあります。
集団生活している病院ではすべての人間を治さなければ意味がない。
完璧に治そうと思うかちょこちょこ適当にやっていくのか・・・。看護サイドがやる気が無ければ意味が無い。皮膚科のドクターがいけば仕事が増えるので嫌がれる場合がある。病院のやり方次第である。やるなら徹底的にするしかない。

先生>たとえば、集団生活において風呂場のマットなどはどうか?
Ns:普通のマットの上にバスタオルを置いているが一人一人変えているわけではい。
先生>マットなどは少し厚くて硬いもの。穴のあいたやつが一番いい。
先生>実際の水虫患者は?動かない人はうつらないが動き回る人は染る。
NS:じゅうたんが一番の感染源かな?
先生>そうですね。フローリングにして毎日拭けばいい。
NS:構造上交換できない場合は?
先生>掃除機で掃除をかけるんですよ。一番大事なのはがんばって治そうという気ですよ?
Ns:ある!!全員を治さなければいけないんですね。
先生>そうです。職員を含めて。職員が家に持ち帰る可能性もあるんですよ。小さい子供まで水虫になっている場合もあるのですから。
Ns:ふええ〜〜。
先生>全員で治そうという気が大切。高城病院はきれいですよ。出来るはずですよ。
冬の間は潜んでいるだけなので、目立ちませんが、消えてるわけではないのです。薬は足全面に塗ること。前から思ってたんですがこの病院の健康サンダルは、たこや魚の目になりやすいのでやめたほうがいい。みんな皮膚が厚い。
Ns:べちゃぞうりのほういいですか?
先生>はい。どうしてかなあ?精神科ではこのスリッパが多いですね。滑りにくいような構造なのかな?
Ns:そうなんです
Ns:靴下をはいたほうが感染しないみたいだが・・・。乾燥させたほうがいいんですよね?夏は患者さんが暑がってあまりはきたがらないんです。
先生>何度も靴下をかえればいい。
Ns:トイレのスリッパは?共用を止めたほうがいいですか?
先生>そうですね。水虫の人がはいたスリッパを履くと染る可能性がありますよ。自分のスリッパでトイレに入るなどの対策を。
Ns:やはりデイルームのマットが気になるんですが・・・。
先生>そうですよ。どうにかしないとですね。
結構一般の人も足のケアをしてない人が多いので。足をきれいにして!
患者への指導はやっているんですよね?
Ns:やっています。足もきれいに洗っています。
廣田>トータルでやろうということでいいですね?トータルで取り組むということでマニュアル化してくださいますか。看護婦さん。
先生>病院にこれない患者へは往診も受け付けますよ。
>スリッパも徐々に変えていく予定です。あと抗菌マットは効果あるんですか?
先生>あまりないです。
>水虫に液とクリームがあるんですが、よその病院で液は無意味と言われたんですけど。
先生>液はつめです。つめにはクリームが浸透しないので、液は有意義です。
廣田>職員のケアーもちゃんとしてくださいね。
先生>10人中4人は痒みのない水虫患者です。最近の広告等でみんな痒くてジュクジュクなっているものが水虫と誤解し、市販の薬を塗っていますね。その中には水虫でない人も居るのです。反対に水虫なのに水虫と気づいてない人がいるのです。約4割が痒みをともなわいのですからね。皮を取ってそれを顕微鏡で見て初めて水虫と判断できるのです。これは皮膚科以外のドクターも、簡単に水虫の薬を渡さないことも肝心です。
医師>どういうときに検査したほうがいいのかな?
先生>皮が向けて、痒かったらとりあえず病院にいって検査を!
Ns:冬は患者が減るが・・・。夏と冬で薬の効き目や期間が違うのかな。
先生>う〜ん・・・それは今度調べてきますよ。変わりはないとは思うんですが。
(後日調べたところ、治療期間は同じです。)
Ns:患者さんの足を手袋をはめないで洗うけど、洗うことでうつったりしませんか?
先生>簡単にはうつらないですよ。そこまで考えすぎることはない。
Ns:患者さんは風呂がない日は前の日に塗った軟膏の上に軟膏を付けても大丈夫?
先生>大丈夫です。
廣田>次回の感染防止委員会ではトータルケアをするにはどんな方法があるのか検討することにいたします。本日の感染対策委員会は松下先生から、実際的で分かりやすいお話をしていただき大変有意義な会を持つことができました。職員の皆様から活発な質問をしていただき、有難うございました。この後、先生には、当院の浴場を見ていただく予定です。看護部長さん、ご案内をお願いいたします。それでは、皆さん、講師の松下先生に感謝の拍手をお願いいたします。
<拍手>


後記:松下先生は、高城病院は、大変清潔ですね、あの特有の臭いがないこと、白癬の患者が少ないこと、褥瘡の患者が少ないこと、このことは、当院が如何に清潔な環境を保っているかという、一つの目安となる、と思われる。これからも、白癬を増やさないよう、全病院的な対策を講じてアメニティーの高い病院作りに励みましょう
(院内感染防止委員長 廣田)。